〈改稿版〉traverse
61/171ページ
商店街の最寄りの駅まで歩いていく事になった。
今まで、樹深くんがどこに住んでいるかなんて知らなくて、聞くこともしなかったけど、今日色々話していく内に、スタジアムの最寄り駅から3駅ほどいった所に住んでいる事が判明した。
だったら、スタジアムの最寄り駅でバイバイでもよかったのに。商店街の駅からだと、樹深くんの駅に行くには乗り換えしなきゃならないから、面倒なんじゃ? そう思ったけれど、
「商店街まで送っていくから。女の子を夜道ひとり歩かせられません。
商店街からはおひとりでどうぞ。どうせ、元さんのとこに顔出しに行くでしょ?」
樹深くん、私の保護者ですか?(笑)
まぁ、もう22時になる勢いだし、ごもっともだなと思い、こうして歩いている。
「…ん?」
商店街まであと半分くらいに差し掛かった頃、頬に何か当たった感触。
「イッサ? どうした?」
「今、雨? 降ってきたような?」
「え、うっそ」
空模様どうだっけ、と二人で見上げた途端、ボタッ。ボタボタボタッ。大粒の雨が地面を打ち付ける。
シャワーに打たれたみたいに、私達はあっという間にずぶ濡れになった。
「ひゃあっ! 今日、雨降るなんて言ってたっけ!?」
「あっ、イッサ、あそこ、コンビニで傘買おう」
ちょうど、道路の向かい側にコンビニがあった。車に気を付けながら、横断歩道のない所を足早に横切る。
辿り着いて、中に入ろうとしたら、
「待って」
後ろから樹深くんに手首を掴まれた。
ビックリして振り向いたら、同時に樹深くんのボディバッグが正面に飛んできた。
「ここにいて。それ持ってて」
財布だけ持って、樹深くんはコンビニの中へ入ってしまった。
…