〈改稿版〉traverse
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「あー、勇実」
いつもの、勇実ぃ、じゃない。
「昨日の、事だけどさ」
「…うん」
「返事…まだ聞いてないんだけど」
「…うん」
「…困ってる? …だよなあ。急に言われたら、なあ。
あ、急いでくれってわけじゃないんだ。
ただ…知っててもらいたくて…
もし…イヤって気持ちがないんなら…
考えてほしいんだ。
いやホントに、ゆっくりでいいからな?」
元ちゃんが、すごく慎重に言葉を選んで喋ってる。
そんな一生懸命な元ちゃんの様子に、ふっと笑みがこぼれた。
「うん…あのね…私も、元ちゃんといるとすごく楽しいよ。
これからも…こうしていられるのなら…
……
……
…いいかなって…」
私の言葉に、元ちゃんが息を飲んだ。
「えっ? ほんと? まじ? いいの?」
「うん…ふふっ、元ちゃん、聞き返し過ぎ。
じゃあ…よろしくお願いします」
ペコリと頭を下げると、元ちゃんが「よっし」と小さくガッツポーズをした。
「…ということで、オヤジ、そんなワケなので…よろしく」
ここまでを、目を丸くしながら黙って見ていた大将が、
「え? 勇実ちゃんが? うちの元と? え? ほんと?
勇実ちゃん、こんなのでいいの? えーっ」
さらに目を丸くしておんなじような反応をする。でも嬉しそうに、ニコニコと私達を見ていた。
きっと…大丈夫だよね。
…