〈改稿版〉traverse
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泣いた、泣いてない、の討論をしながら、私達は軽くお茶をした。お昼に差し掛かっていたけど、映画館で食べちゃってるから、お腹はさほど空いていない。
大きな窓ガラス越しのカウンター席、目の前にはこの街一番のシンボル、大きな観覧車がそびえ立つ。すぐ近くに狭いながら遊園地がある。
この街に住んでいるのに、まだ一度も入った事ないんだよなあ。今日せっかくここまで出て来たんだから、ちょっと行ってみたいなぁ、なんて言ったら元ちゃん呆れるかな?
そんな事を考えながら、冷たいアイスティーをズズズと飲んでいると、
「なあ」
「うん?」
「まだちょっと時間あるから…あの中行ってみるか?」
なんと元ちゃんの方から、遊園地のお誘い。ビックリして、アイスティーが気管のへんなトコに入った。
「げほっ…え? 行くの? 元ちゃん、そういうのキライそうなのに」
「はは、なんだそれ。別に、キライではないし。オマエがすげえ行きたそうにしてるし(笑)」
ばれてた。
「まだ入った事なくて。え、ほんとに行っていいの?」
「行かないなら、このまま帰るだけ。店の仕込みやるかなー」
「行きます行きます! ぜひ連れていってくださーい!」
「ははは(笑)」
こうして、ランチの後私と元ちゃんはその遊園地で少しだけ遊んでいく事になった。
入園は無料だけど、アトラクションに乗るのは一個一個別料金。時間と財布と相談しながらだと、みっつほどしか乗れなかった。
急降下バツグンのローラーコースターと、ペダルを二人で漕ぐスカイサイクルを楽しんだ後、
「最後、アレ乗ってくか?」
元ちゃんが観覧車を指差した。
…