〈改稿版〉traverse
27/171ページ
はぁ。この一週間、色んな事が起こった…気がする。
典ちゃんにも、おばあちゃんにも、樹深くんとのあれこれを細かに話したら、ふたりとも笑っていた。
知り合い以上友達未満。私と樹深くんの関係はそれだろう。
マッサージの仕事と、おばあちゃんと過ごす時間を経て、また、私にとっての週末の月曜日がやってきた。
いつものように喫茶KOUJIのモーニングを食べに行く。
カラカラン♪
「いらっしゃい、勇実ちゃん」
「やっときた~」
「げっ」
入口で固まってしまった。また、カウンター席に樹深くんがいた。
なんで? 常連客だったの? でも今まで、逢った事なかったよ?
「遅いよイッサ。イッサが来ないと、モーニング決まらないって。俺、もうコーヒー3杯目だよ?」
「はは、悪いネ。他の曜日なら前日に決めちゃうんだけどネ。
ていうか、ふたり知り合いだったんだ?」
マスターが口髭を撫でながら言った。
「知り合いっていうか…まぁ、知ってる人だけどさ」
誕生日とか歳とかあの場所でギター弾いてるとか、そんな情報しかないもん。あれ、ただの知り合いというには、少し知り過ぎ?
「そんな事はいいから! 今日のモーニング、何?」
「そうだな~。ライ麦のロールパンに、レモンバジルのソーセージとレタス挟んだのと、ツナ卵挟んだのはいかが? あと、フルグラにヨーグルトたっぷりかけたのも付けちゃう」
「おいしそう! 大至急お願いします」
「かしこまりました(笑) コーヒーは一緒に持っていくからネ。
キミ、すっかり待たせちゃってごめんネ。大至急作るからネ」
マスターは樹深くんにウィンクして、カウンターの奥に消えていった。
「イッサ、なんでそんな離れた所に座るの」
いつもの定位置に腰を下ろすと、樹深くんがカウンターの丸椅子をくるっと回転させて、私にそう言った。
「いいんですー、ここが私の席なの。
何? 話がしたいなら、そっちがこっちに来たらいいでしょ」
「え、ヤダよ。俺、ここがお気に入りなんだから」
「あー、そーですか。じゃあずっとそこにいればいいでしょ。
もう、ほっといて。私、この店にいる時は、静かにまったりしたいの」
「ねぇイッサ、なんでそんな大きい声で喋るの。大丈夫だよ、聞こえてるから」
「だって、こんな間空いてるし…」
「え? ナニ? 聞こえない」
「聞こえてないんじゃん!」
樹深くんはボソボソ声でもよく通るから、こんなに間が空いてても関係ないんだよ。
ていうか、相変わらず人の話を聞かないんだから。
…