〈改稿版〉traverse

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 はぁ。この一週間、色んな事が起こった…気がする。

 典ちゃんにも、おばあちゃんにも、樹深くんとのあれこれを細かに話したら、ふたりとも笑っていた。

 知り合い以上友達未満。私と樹深くんの関係はそれだろう。



 マッサージの仕事と、おばあちゃんと過ごす時間を経て、また、私にとっての週末の月曜日がやってきた。

 いつものように喫茶KOUJIのモーニングを食べに行く。

 カラカラン♪

「いらっしゃい、勇実ちゃん」

「やっときた~」

「げっ」

 入口で固まってしまった。また、カウンター席に樹深くんがいた。

 なんで? 常連客だったの? でも今まで、逢った事なかったよ?

「遅いよイッサ。イッサが来ないと、モーニング決まらないって。俺、もうコーヒー3杯目だよ?」

「はは、悪いネ。他の曜日なら前日に決めちゃうんだけどネ。
 ていうか、ふたり知り合いだったんだ?」

 マスターが口髭を撫でながら言った。

「知り合いっていうか…まぁ、知ってる人だけどさ」

 誕生日とか歳とかあの場所でギター弾いてるとか、そんな情報しかないもん。あれ、ただの知り合いというには、少し知り過ぎ?

「そんな事はいいから! 今日のモーニング、何?」

「そうだな~。ライ麦のロールパンに、レモンバジルのソーセージとレタス挟んだのと、ツナ卵挟んだのはいかが? あと、フルグラにヨーグルトたっぷりかけたのも付けちゃう」

「おいしそう! 大至急お願いします」

「かしこまりました(笑) コーヒーは一緒に持っていくからネ。
 キミ、すっかり待たせちゃってごめんネ。大至急作るからネ」

 マスターは樹深くんにウィンクして、カウンターの奥に消えていった。

「イッサ、なんでそんな離れた所に座るの」

 いつもの定位置に腰を下ろすと、樹深くんがカウンターの丸椅子をくるっと回転させて、私にそう言った。

「いいんですー、ここが私の席なの。
 何? 話がしたいなら、そっちがこっちに来たらいいでしょ」

「え、ヤダよ。俺、ここがお気に入りなんだから」

「あー、そーですか。じゃあずっとそこにいればいいでしょ。
 もう、ほっといて。私、この店にいる時は、静かにまったりしたいの」

「ねぇイッサ、なんでそんな大きい声で喋るの。大丈夫だよ、聞こえてるから」

「だって、こんな間空いてるし…」

「え? ナニ? 聞こえない」

「聞こえてないんじゃん!」

 樹深くんはボソボソ声でもよく通るから、こんなに間が空いてても関係ないんだよ。

 ていうか、相変わらず人の話を聞かないんだから。





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