〈改稿版〉traverse
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夕方。商店街のゲートにオレンジの光が射し込む、この時間帯が好き。西陽が眩しくても気にしない。
自転車でゲートをくぐり、歩行者に気を付けながら、カッシャンカッシャンとゆっくりペダルを漕ぐ。
「
そう声を掛けてきたのは、いつもお世話になっている、マッサージ屋の店長の
「潤子さん、その言い方誤解される!
バイトですよ、バー、イー、トー!
ラーメン食べに行くんじゃないんですよー?」
「あっはっは、分かってるって。しっかり働いておいで、勇実ちゃん。
明日はウチだからね、頼むよ」
「はぁい。いってきまぁす」
潤子さんに手を振りながら、私、
車の通らない、歩行者天国のこの商店街。あらゆる所に文明開化の洒落た街灯、よく分からないモニュメント、仰々しい石碑…そんな雰囲気も好き。
商店街の真ん中を越えた所で、一本外れた通りに入る。しばらく走れば、私がこれから行くお店、ラーメン居酒屋きたいわ屋がある。
お店の脇の細道に自転車を停め、まだのれんの出ていない出入口をくぐった。
「おつかれさまでーす」
…