〈改稿版〉traverse

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「ほらほら、今日のランチ、説明して」

「えーっと。今日はね、海の幸たっぷりシーフードピラフ!
 あ、マスターお手製ブレンドコーヒーも一緒に入ってた」

「よし、じゃあ早速食べよう」

「へっ? オンエア中に食べちゃうの? 咀嚼の音とか入ったらマズイよね?」

「まぁ、そうね。気を付けて貰えると助かる。
 いただきまーす」

「いただきまーす。
 …んっ! オイシイ! 塩加減絶妙ー!」

「ほんと、うまっ。
 …フフ、いいね、こういうの。また、たまにやろうかな?」

「えーっ? まぁ、たまにならね。いいよ」

「さて。リスナーさんからの質問を承っております。
 【こんにちは。ローカルだけど、
  毎週楽しみに聴いてます。
  樹深さんに質問です。イッサ先生とは
  どういう関係ですか?】」

「ちょっ…トモダチです。トモダチですからっ」

「えー、つれない。こんなにもスキなのに…」

「ぶっ…あのね、だからね、あーもう。
 付き合ってます。付き合ってますとも。
 …ナニ言わせるのよっ」

「あはは。よかった」

「よくない! あああ…また道端でなんか言われるぅ…」

 テーブルに突っ伏す勇実の頭を撫でて、側に立てていたギターを手繰り寄せる。

「イッサ? もう最後のほうだから。なんかリクエスト、どうぞ?」

「んー…じゃあ…【traverse】」

「りょーかい。
 それでは今日は、僕の楽曲【traverse】をお聴き頂きながらお別れしたいと思います。
 皆さん、よい週始めを!」

 言った後に、片頬をテーブルに着けたまま俺の方に目を向ける勇実に、ありったけの思いを込めて【traverse】を歌った。





 ──勇実は、気付いてる? これが、勇実に向けた恋歌ラブソングだってこと。

 いつか、そう遠くない未来に、ここで、曲を流している間に、こっそりプロポーズしようかなって考えてる事…





 勇実はまだ、知らなくていい。










〈改稿版〉traverse〈完〉





[リアルタイム執筆期間]
2020年6月8日~9月18日

[改稿終了日]
2021年6月11日

[執筆BGM]
夕立ち / Something ELse
ギターマン / Something ELse
元気ですか? / Something ELse

[ストーリーBGM]
月曜日の週末 / ゆず
巨女 / ゆず
始発列車 / ゆず



【traverse】番外編集へ続く






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