〈改稿版〉traverse
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(★)
私と樹深くんは、本当に
そんな事を頭の隅っこで考えながら、朝まで居られる場所で、眠りに落ちるその時まで、沢山のものをお互いの体に刻みつけた。
樹深くんがこんなに近い。声も。鼓動も。私の肌を擦る感触も。
忘れない。忘れたくない。
そう思ったら、また急に目が熱くなって、樹深くんの顔がゆらりと揺れた。
「…イッサ、ゴメン、俺ばっかり」
樹深くんが切なそうに顔を歪めて、両手で私の顔を包んで、親指で私の涙を拭う。
私は首をフルフルと横に振って、溢れる気持ちを懸命に言葉にする。
「ちが…っ、私…私…樹深くんが…こんなに…
……
……
──樹深。大好き。大好き…っ」
樹深くんが大きく息を飲む。
「う…わ…イッサぁ、ズルいよ。
もっと言って、勇実。
もっと…俺を呼んで」
「樹深。私も、聞きたい。
樹深の声、もっと聞きたい。
好きって言ってよ…樹深…」
「勇実。
好き。
好き。
言い足らないくらい好き。
俺、勇実を…
…俺の事、忘れさせない」
合わせた唇の合間から、私達の果てしない感情が次々と零れていった。
シーツの中で何度も囁きあったこの夜を、何度も繋がったこの夜を、一生忘れることなんてない。
…