〈改稿版〉traverse
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私の通う専門学校がこの繁華駅の近くで、実家の最寄り駅から電車一本で行けた。
「終電の時間、確認しておきなよ」
樹深くんに言われて、手帳に挟んである時刻表をさっと見た。23:26。今、19:41。
あと4時間くらいしか、一緒にいられないんだ…
私達は一度駅を出て、海に面しているショッピングモールに入った。
しばらく日本食にありつけないから、という樹深くんのリクエストで、和食屋さんで夕飯を食べた。
それから、寒いけど外のデッキに出て、テイクアウトのコーヒーを片手に、肩を寄せ合いながら色んな話をした。
出逢った頃の事。そこからここまでの事。これからの事。
「マッサージの学校って、俺よく分かんないけど、何年で卒業出来るものなの?」
「うちの学校はね、二年制なの。私は後1年と少し…
そしたらね、潤子さんの所で正式に雇ってもらうの。また、商店街の近くに住みたい」
「そっかぁ。その頃には…帰って来てるといいなぁ…」
「…ん…」
せっかく…想いが通い合っても…
明日から、少なくとも1年間は、こうしてふたりで逢ったり出来ないんだ…
逢いたい時に、逢えないんだ…
突然降って沸いた寂しさに、視界がゆらりと揺らされた。
「あっ、シーバス!」
ごまかすように、ちょうど足下に走ってきた水上バスを指差す。
「もう少し来るのが早かったら、最終便に乗れたね。向こうの夜景の方とか、シーバスから見たら綺麗だろうね」
「ん…見よう? 帰ってきたら…必ず…」
そう言って、樹深くんはコーヒーを持ってない方の手で、私の手を握った。
「手紙書いてね。私も書く」
「うん」
「電話はたまにでいいよ」
「うん。うん? なんでよ(笑)」
「だってお金かかるし」
「はは。俺はイッサの声聞きたいけど。じゃあ、たまにね。ガマンしてあげる」
「ナニソレ(笑) 私だってねー、樹深くんの声聞きたいけど。ガマンしてあげるんだから」
テンポの心地いいこの会話も、もうすぐ終わるんだ。
ショッピングモールの営業が終了して、私達はまた駅に戻ってきた。
…