〈改稿版〉traverse

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 樹深くんには、泣いてるところばっかり見られてる気がする。

 樹深くんが私の手を離して、頬を包みながら、親指で涙を拭ってくれた。

 樹深くんの手、冷えてるなぁ。そんな事を思いながら、されるがままにしていると、

「ひぁっ」

 樹深くんの手が、私の耳たぶをフニフニと揉んでくる。

「ちょ…っと、冷たっ…いんですけど!」

 たまらず首を竦めた。

「んー? イッサの耳、気持ちいーね。もっと触りたい(笑)」

「や…だから…っふふ、あっはは!」

 涙が引っ込んで、下を向いて笑っていると、

「笑ってるの、好き」

「え…っ」

 樹深くんが急に真顔になって、そう言いながら下から掬うように…唇が触れた。

 掠るようなキス。それなのに、近づいてくる樹深くんの顔、唇にかかるタツミくんの息に、頭がのぼせそう。

 耳がくすぐったいのと、恥ずかしいのとで、首を竦めたまま後ずさりをしたら、樹深くんが追いかけてくる。

「…逃げないでよ…」

 今度は耳を覆われて、同じ高さの目線で、2秒くらいのキス。

 離れる時にリップ音が響いて、頬がカーッと熱くなった。

 樹深くんもそれが恥ずかしかったのか、顔を赤くしてニヒッと笑った。

 私も、笑ってる樹深くんが、好き。

 冷えた樹深くんの手に、そっと自分の手を重ねた。

「はー…あったか…」

「ふふ…寒がりですねぇ。そんなに着込んでるのに?」

「えーっ…イッサは、平気? 今日はホント寒いって。
 …ねぇ…あっためてよ…」

 樹深くんが背筋を正して、私の肩に腕を回した。

 樹深くんの胸元に顔をうずめられて、ドキドキする。

 顔を上げると、目が合った。

 樹深くんの顔がまた近づいてくる。

 私は両手を樹深くんの背中に回して、目を閉じた。

 上からのキス。何度も唇を甘噛みし合う。

 いっぱいリップ音が鳴った、でも今度は気にならなかった。

「イッサぁ…大好き…」

 合間に樹深くんが掠れ声でつぶやく。

 樹深くん、それは、ズルい。

 体温が上昇する。

「…私も…す…ンン…」

 ほら、言わせてくれない。やっぱりズルい。

 空から雪が舞い始めていた。それも、気にならなかった。

 樹深くんの唇に、夢中になっていた。





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