〈改稿版〉traverse
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【traverse】
♪車道と歩道が交差するように
♪人と人も交差して出逢う
♪そんな風に君とも
♪交差して出逢えたんだ
♪君は僕の好きな花に似ていて
♪小さいけれど力強くて
♪周りを元気にしてくれる
♪君は僕の好きな花に似ていて
♪太陽に憧れて上に伸びるように
♪大きな夢へとひたむきに進んでいく
♪君は僕に勇気の種をくれた
♪君の笑う声が君の仕草が
♪僕の種を芽吹かせて大きくした
♪君が存在するならなんにも怖くない
♪そんな風に思ってかまわないかな
♪進む道が全然違う僕と君は
♪花開くその時にまた逢えるかな
♪traverse この大切な場所で
♪traverse 引き寄せられるように
♪きっとまた交差するだろう…traverse
…こんなに距離があるのに、まるで目の前で聴いていたかのように、私にもしっかり届いた。
わぁっ! と歓声が沸いた。
樹深くんの心のこもった伸びやかな歌声に、涙する人が何人もいた。
「最後までありがとうございました。お粗末様でした。申し訳ないんですけれど、皆さん、早々に撤収をお願いします」
言いながらギターを片付ける樹深くんの姿に、ギャラリーは大爆笑。
お疲れさん、向こうでも頑張って、と口々にエールを送り、樹深くんの肩や背中を叩いていってから、ギャラリーは散り散りにこの場を去っていった。
その後で、自分の乗ってた台を片付けようとする樹深くんに、交通警備の人がこってり絞った。もっと前もって許可を得て欲しかったと。
「すみません、すみません」と何度も頭を下げる樹深くんを、私はさっきまで立っていた円形のベンチに座りながら見ていた。
ようやく解放されて、片付けも終わって、樹深くんがこちらに歩み寄ってきた。
「…逢えた。
…また泣いてる」
私を見下ろす樹深くんを見上げたら、スウッと涙が頬を伝った。
…