〈改稿版〉traverse

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「あ、髪になんかついてる」

 モーニングを食べ終えて、食後のコーヒーをたしなんでいると、樹深くんが指を差して言った。

「あ? ホント? どこ?」

「あー、待った待った。じっとしてて。ありゃー、なんだこりゃ。絡んでる」

 樹深くん、絡まった髪と格闘(笑)

「ふふ…お手数かけますねぇ」

「いーえー。イッサ、細毛で猫っ毛だね。だから絡んじゃうんだよー…」

「……」

 チラッと、横目で樹深くんを見る。

 樹深くんの顔、すごい近い。目を細めて、むーと口を尖らせながら、髪に絡んでいるらしいゴミを丁寧に取り除いてくれてる。

 そんな樹深くんが面白いと思う気持ちが半分。

 もう半分は…なんなんだ、この状況? というパニック。

 樹深くんの指が私の髪を擦るたびに、なんかこう…なんだコレ。

 ドクドクッ…ドクドクッ…

 まただ。心臓が、ウルサイ。

「よし、取れた!」

「へ? あ、ありがと。はは、ナニ、樹深くん。そのやったぜ! みたいなカオは(笑)」

「えー? だって、うまく取れたでしょ。スゴくない?(笑)」

 そう言うと樹深くんは、指で髪が絡んでた所を梳いた。

「っ…」

 ビックリした。今、心臓跳ねた。

「ハイハイ。お疲れ様でしたねぇ」

 平静を装う。私、おかしい。樹深くんに気付かれたくない。

 樹深くんはひと仕事を終えて、満足そうにコーヒーをすすっていた。



 いつもの喫茶KOUJIでのやりとりなのに…これまでになかった違和感。樹深くん。暴れる私の…心臓。

 …どうしちゃったんだろう。ヘンだよ。





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