〈改稿版〉traverse

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「イッサは…今、どこで寝てる?
 きっと…あの辺りなんじゃない…?」

 樹深くんが指を差した方向を見る。

 窓の下。何で分かるんだろう。

「うん…向こうに寝室あるけど…ヒトリで暗い所はイヤで…
 そこなら…月明かりが入ってきてね、おばあちゃんの写真も見えるから…」

 樹深くんが私の手を引いて、そこに座らせた。樹深くんも私のすぐ隣に座る。

 肩を寄せ合って、私の手の甲を、樹深くんの手が優しく覆う。

「しばらく…こうしてるよ?」

 私の目を見ずに、樹深くんは言った。

「うん…ありがと…」

 私も、目を伏せながら言った。

 くっついている部分から、樹深くんの熱がじんわりと伝わる。

 それだけで…安心したというか、なんかもう、この時の私にはよかった。

 …手のひらを上に向けて、樹深くんの手を握り返したらよかっただろうか?

 …いや、それは私も樹深くんも、多分望んでいなかったと思う。





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