〈改稿版〉traverse
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月曜日。
この曜日に専門学校の講義をひとつも入れていない私。きたいわ屋も潤子さんの所も、お休みにさせて貰っている。
よって、平日であるはずの月曜日は、私にとっては週末という事になる。
カラカラン♪
月曜の朝は決まって、喫茶KOUJIのモーニングを頂く。
入口のすぐそばの窓際、私の指定席。
「いらっしゃい、勇実ちゃん」
喫茶KOUJIのマスターは、私のお父さんの友人で、この町に暮らし始めた時からお世話になりっぱなし。多分、お父さんからも頼まれているんだろう。
「おはようございまぁす。今日のモーニング、何ですか?」
「今日はねぇ、どうするかなぁ?
厚切りのピザトーストに、トロットロのスクランブルエッグでいかがかな?」
マスターはいつも、私の顔を見てからモーニングの内容を決める。
「わあっ、じゃ、それで!」
「ふふ。では出来るまで、こちらをどうぞ」
そう言ってマスターは、淹れたてのホットコーヒーをテーブルに優しく置いた。
あーいい香り。コーヒーの香りって、なんでこんなに落ち着くんだろう。
香りをたっぷり堪能してから、私は砂糖とミルクをひとつずつ入れて、ちょっぴりずつ飲んだ。
「すみません、モーニングひとつ、お願いします」
「はいよ。ちょいと待っててネ。今、パパッと作っちゃうから」
ん? お客さんいたんだ。
いつも私ひとりだから、マスター以外に誰かいるなんて、不思議な感じ。
それに、今の声、聞いた事あるような?
声の方へ顔を向けると、カウンター席に座る後ろ姿を捉えた。
あれ?
黒いチューリップハット。
長い襟足の黒髪。
あれ?
…