〈改稿版〉traverse
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瞬く間に日々が過ぎた。
おばあちゃんが亡くなって3日後に、家族葬で、親戚のみで通夜、告別式、火葬を執り行う事になった。
元ちゃんには、家族葬なので香典弔電諸々辞退したい旨を知らせた。
お母さんを亡くしている元ちゃんは、私が多くを語らなくても分かっているようだった。
落ち着くまでは無理に連絡しなくていいから、体だけには気をつけろよ、と言ってくれた。
葬儀屋さんとの打ち合わせの合間に、おばあちゃんの体を置かせて貰っている斎場の安置室に足を運ぶ。
おばあちゃん、お水ほしい?
水を含ませた脱脂綿をピンセットで摘まんで、おばあちゃんの口にポンポンと押した。
ここだけ、時間が止まっているみたいだ…周りはとてもせわしく動いているのに。
静か過ぎて、耳が痛い。お線香の匂いが、やたら落ち着く。
通夜が始まる前日まで、時間が取れればそうしていた。
通夜の日、親戚一同が集まって、通夜の後おばあちゃんを忍んで通夜振る舞いをした。
そして翌日の告別式、火葬と事が進んで…
おばあちゃんの骨を拾って骨壺に納めた時も、不思議と涙が出ず…おばあちゃんが亡くなってから、一度も涙が出ていない。
通夜振る舞いの食事も、火葬の後の軽食も、喉を通らなかった。
おばあちゃんの魂が消えて、体も消滅して、私の心も空っぽになったようなのに、涙は出てこなかった。
そして、やらなければならない様々な所用をこなして…自分の宣言通り、2週間が経った頃、いつもの生活に戻った。
というよりは…いつもの生活に無理矢理戻らないと、自分がどうにかなってしまいそうだった。
おばあちゃんが施設から帰ってきて、施設に一緒に戻って一泊して、朝に家にひとり帰った後の、どうしようもない寂しさ。
あれがずっと続いていて…辛かった。
…