〈改稿版〉traverse

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 私のすぐ横で、樹深くんがお二人を見つめながら、じっと考え込んでいた。

「即興でも、いいですか?」

 この言葉を聞いて、私は自然と顔を綻ばせた。

 こう言った時の樹深くんは必ず素晴らしい歌を作るのを、私は知っているから。

「かまわないよ」

 神田さんと織田桐さんも、優しい笑顔で樹深くんを見守る。



 ♪ガキの頃から仲がいい
 ♪並んで竹馬、は古いけど
 ♪並んで自転車 並んでバイク
 ♪並んでギター 並んでたまには勉強(笑)
 ♪大人になって並んで酒も
 ♪飲めるようになった

 ♪大人になって逢う頻度も減った
 ♪それぞれの家庭 互いの知らない時間
 ♪それでも逢っちまえばさぁ
 ♪全然関係ないんだよ

 ♪だってオマエいつだって
 ♪あの頃のままのオマエなんだもん
 ♪しわくちゃじいちゃんになったって
 ♪オレの前にいるオマエは
 ♪ずうっとあの頃のままのオマエ

 ♪いつまでそうしていられるかな?
 ♪んなコト考えてるヒマがあるなら
 ♪オレの酒に付き合えよ!
 ♪ドクターストップかかったら
 ♪ズズズと茶でもすすろうや

 ♪わかったか? 絶対だぞ? 約束な
 ♪ゆびきりげんまん
 ♪ガキの頃から続く
 ♪オレたちの儀式



(樹深くんは後に、この時の歌を【竹馬の友】と名付けた)



「…お粗末さまでした。
 すみません、お二人を見てたら…こんなんだったのかなって、勝手に想像しちゃいました」

 歌い終わり、黒いチューリップハットを取って、深々とお辞儀をする樹深くん。

 自分達の事を歌われていると、多分途中から気付いていたのだろう。神田さんと織田桐さんは、くっくっくっとずっと笑いを堪えきれないようだった。





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