〈改稿版〉traverse

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 一旦落ち着いたところで、元ちゃんが私と樹深くんに味噌ラーメンを出した。

「わぁい、元ちゃんありがとー」

「俺にも? いいんですか?」

 喜ぶ私と、戸惑う樹深くん。

「おごるって言ったろ。食え食え。
 実はさぁ、表に出そうかなって思ってんのよ、ソレ」

「えっ? 聞いてない!」

「今初めて言ったもん。
 勇実にしかウケねぇって思ってたけど、樹深くんも、美味いって言ってくれたじゃん?
 まぁ、まずは期間限定でやってみようかなってね」

「えーっ! じゃあ、もう、私には味噌くれないって事!?」

「ぎゃはは。さーて、どーすっかなぁ。次からはお代を頂こうかな」

「ヒドイ! 元ちゃんの味噌ファン第一号なのにー! その仕打ちはナニよー!」

 元ちゃんの肩をガタガタと揺らすも、元ちゃんはニシシと笑うだけ。

 樹深くんも、私達のやりとりを見て、クスクス笑いながら味噌ラーメンをすすった。

 食べ終わって、樹深くんがまたオジサマ達にせがまれて歌いに席を立った時、元ちゃんが私をじっと見ているのに気付いた。

「元ちゃん? なに?」

 首を傾げて聞くと、

「オマエは…やっぱ、そうでなくっちゃな」

 目を伏せて、優しく微笑みながら、元ちゃんは言った。





 私は…元ちゃんと恋愛できて、本当によかったと思った。

 夏の熱がもう、すっかり取れた頃だった。





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