〈改稿版〉traverse
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それしか…ないのかなぁ?
私も…元ちゃんも…付き合う限りつきまとう不安があるのなら…
…そうするしかないのかなぁ…?
「元ちゃんっ…私、まだ、元ちゃんが…っ」
「ばか、言うなよ。決心…鈍っちまうだろ…」
手の甲で涙を拭いながら、元ちゃんは遮った。
「……
……
…なぁ…
…最後にさ…
…してくれる?
…オマエから…」
自分の唇を指先でトントンと叩く、元ちゃん。
そう、いつも、元ちゃんからだった。
初めての時と同じように…ふたりでしゃがみこんだ。
涙で滲んだ目で元ちゃんを見つめたら、そんな目で見るなってたしなめられた。そんなの、無理。
元ちゃんがそっとまぶたを閉じた時、私は元ちゃんの肩に手を乗せて…触れるだけのキスをした。
何秒、そのままだっただろう。
嗚咽を押し殺した私の震える唇を、元ちゃんは静かに受け止めてくれた…
「…サンキュ、勇実」
唇がそっと離れて、元ちゃんは私の頭をクシャッと撫でた。
…