〈改稿版〉traverse

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 路地から出た時、向こうから樹深くんが歩いてくるのが見えた。

 樹深くんが私達に気付いて、早歩きになった。

「え? 元さん? どうして?」

 樹深くんが混乱した様子で私と元ちゃんを順番に見る。

「また…食べに来て。コイツいる時に。味噌、おごってやるからさ。
 …じゃーな、勇実。また、明日な!」

 樹深くんの肩をぽんと叩きながら、元ちゃんは明るく言って、去っていった…

 元ちゃんの小さな後ろ姿が、みるみる内に歪んでいく。

「イッサ? え? どういうこと?」

 まだ、事態を飲み込めてない樹深くん。

「元ちゃんと…お別れしたよ」

「えっ」

「元に…戻ったんだよ…」

 私の言葉に樹深くんがはっと息を飲んで、元ちゃんが行ってしまった方へ顔を向ける。

 しばらくの沈黙の後、

「そう…そっか…
 …それで…イッサは…
 …元気になれるの…?」

 後悔はしないのか、そう言われているようだった。

 後悔、しないわけないじゃん。でも。

「…あのままだったら、きっと…私も元ちゃんもダメだもん…
 元ちゃん…私達に一番いい方法を…選んだんだよ…
 …今すぐには…ムリだけど…
 ……
 ……
 ゆっくり…っ、忘れるから…っ。
 うっ…うぅ…っ」

 途中から、我慢していたやりきれない気持ちが溢れて、うまく言葉にならなかった。

 けれど、樹深くんはじっと聞いてくれて…

 落ち着くまで、喫茶KOUJIの入口の前で、私の頭をぽんぽんと撫でた。





 こうして…私と元ちゃんの恋愛は、終わりを告げた。





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