〈改稿版〉traverse
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土曜日。
もう、自分の中に閉じ込めておくのが限界だった。
マッサージ勤務の昼休憩で典ちゃんとランチをした時に、あの夜以降の事をかいつまんで話した。
サナダにされた事。
樹深くんに寸での所で助けられた事。
元ちゃんと触れる度、思い出して苦しい事。
元ちゃんと…ダメになったかもしれない事。
典ちゃんはみるみる内に青ざめて、
「勇実ちゃんっ…ごめんね、ごめんね…っ」
目から下を両手で覆って、目にいっぱい涙を溜めながら、私に沢山謝った。
自分がストーキングの標的にならなければ、そんな事にはならなかった、と。
典ちゃんのせいなわけない。
「典ちゃん…もう、アイツ来ないから…安心していいからね…」
私達は静かに抱きしめ合いながら、涙を流した。
そしてまた、月曜日になって…
この日は、私がいつもの時間に喫茶KOUJIにやってきて、まだ樹深くんが来てなかった。久しぶりにイサミモーニングメニューにありつけた。
でも、プレートが運ばれてきても、すぐに手をつけられず、食前のコーヒーを飲みながら、この一週間をボンヤリと振り返った。
私…どうしたらいいのかな…
涙が滲んでコーヒーがゆらりと揺れた時、窓の外で気配を感じた。
え…どうして…
ガタン
私は外へ飛び出した。
「…よぉ」
そこにいたのは、元ちゃんだった。
…