〈改稿版〉traverse

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 お盆休みが終わり、翌日の火曜日から整体の講習が再開されて、いつもの日常に戻った。

 勉強に仕事にがむしゃらに打ち込んだ、サナダとの事を早く忘れたかった。

 きたいわ屋での勤務も、至って通常…のつもりだったけど、

「オマエ、病み上がりのクセに飛ばし過ぎ。無理すんな」

 元ちゃんに見抜かれた。

「いつもの味噌はまだダメか? 冷やし中華とかがいいか?」

「ふふ…うん。元ちゃん、ありがと」

 元々夏バテなんてのはウソなんだけど…元ちゃんの気遣いが嬉しい。

 上がりの時、元ちゃんにそっと手首を掴まれた。

「っ!!」

 ビクッとしてしまった。あの夜を…思い出してしまう。元ちゃんに気付かれてしまう。

「あ、あの、元ちゃん…」

「オマエやっぱ、まだ顔色悪い。今日は…やめような」

 裏口での秘め事。心臓がバクバクする。元ちゃんとサナダ、全然違うのに…暗がりの路地で、という共通点に吐き気がした。

「…うん…ごめんね…」

 外まで見送ってくれて、素早くキスだけしてくれた。

 端っこだったとはいえ、サナダに掠められた…この穢れた箇所を、元ちゃんのキスで全て忘れられたらいいのに。






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