〈改稿版〉traverse
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──それから、どうやって過ごしてきたんだろう…?
土曜日、いつも通りにマッサージの仕事をこなした。典ちゃんに、水曜日以来サナダの影を感じなくなったと聞かされた。
潤子さんにも事情を話していたので、次に来店した時の対策を念入りに練っていたらしいけれど、サナダが来ないので肩透かしみたい。
「勇実ちゃん? なんだか、顔色が悪いよ…? 大丈夫…?」
「えっ? う、うん、平気平気、夏バテかなぁ、あははぁ」
正直に言うと、サナダの名前を聞いただけで吐き気がした。でもそんな事、誰にも言えない。あんな事があったなんて、言えない。
おばあちゃんが帰ってきた時も、悟られないよう元気に振る舞った。
でもおばあちゃんは、私をギュッと抱きしめた。何も聞かないけれど、無理だけはしないように、それだけ言われた。
土曜日、日曜日と、元ちゃんの所に顔を出しに行けなかった。
ただLINEだけ、夏バテみたいでちょっと調子が悪いから、火曜日の勤務まで会いに行けそうにないと伝えた。
元ちゃんは、無理すんなよ、と送ってきた。寂しさが文面から伝わった。
樹深くんに…連絡を取るのが恐かった。
あれからどうなったんだろう、樹深くんの安否が気になったけれど、とてもじゃないけど自分から連絡出来なかった。
樹深くんからも…連絡はなかった。
ひとりで家にいる時、サナダにつけられた、鎖骨下の赤い痕が視界に入って、どうしようもなく悔しくて、ガリガリと引っ掻いた。
こんなことで消えるワケがない。絆創膏を貼って、夏で暑いのに、シャツのボタンも上まで留めた。
月曜日が来た。
喫茶KOUJIに行くのを…ためらった。カチコチカチコチ、いつもの時間に近づく。体が重たい。
…樹深くんに…ちゃんと顔見てお礼を言わなきゃ…
わずかな気力をふりしぼって、喫茶KOUJIに向かった。
カラカラン♪
私が入る前に、お店の扉が開いた。
出てきたのは、樹深くんだった。
…