traverse
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「イサミちゃん、ノリちゃん、今日はお疲れ様。また次回も頼むね」
「はぁい! お疲れ様でしたぁ、お先に失礼します」
私とノリちゃんは早番で夕方まで。遅番のアルバイトさん達と入れ替わりで、仕事を上がった。
「じゃあまたね、イサミちゃん。また、ランチしようね」
「うん! ノリちゃん、ありがと。すごく美味しかった。ごちそうさま。カレにもよろしくね」
一緒にお店を出たけれど、私達はすぐに別れる。ノリちゃんは私の家とは反対方向の、商店街のどんつきにある駅に向かうから。
そして私も、土曜の午後は足早に帰る。施設でお世話になっているおばあちゃんが、週1で家に帰ってくるから。
私は、親元を離れてこの町に暮らしている。
この町はお父さんの故郷で、お父さんが結婚してここを出てからも、おばあちゃんはひとり残って暮らしてきた。
私は小さい時からしょっちゅう、お父さんにこの町に連れてきて貰っていた。
おばあちゃんも、この商店街も、昔から大好き。
ある時、おばあちゃんが大きな病気をして…
命はとりとめたけれど、またいつ何が起こるか分からない。
この町を離れたくないおばあちゃんは、お父さん達との同居を頑なに断り、この町の施設に入居した。
でも、これまでおばあちゃんやお父さんが過ごしてきた家を手離したくはない、どうしよう?
「じゃあ、私がそこに住んでいい?
ちゃんと手入れするし、おばあちゃんの様子も見に行けるし、マッサージの勉強もしやすいもん。
おばあちゃんの助けをさせて下さい」
皆、賛成だった。
こうして、私がここに引っ越してきて3ヶ月、色々目まぐるしかったけれど、なんとかやっていけてる。
家に帰って、きれいに掃除をしていると、施設のワンボックスが家の前に停まって、おばあちゃんが車椅子で降りてきた。
「勇実ちゃん、ただいま」
おばあちゃんがにっこり笑って言った。
「おかえりぃ、おばあちゃん」
胸の奥がキューッとなって、私はおばあちゃんに抱きついた。
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