traverse

98/168ページ

前へ 次へ


 土曜日。

 もう、自分の中に閉じ込めておくのが限界だった。

 マッサージ勤務の昼休憩でノリちゃんとランチをした時に、あの夜以降の事をかいつまんで話した。

 サナダに乱暴された事。

 タツミくんにすんでの所で助けられた事。

 ハジメちゃんと触れる度、思い出して苦しい事。

 ハジメちゃんと…ダメになったかもしれない事。

 ノリちゃんはみるみる内に青ざめて、

「イサミちゃぁん…ごめんねぇ、ごめんねぇ…」

 目から下を両手で覆って、目にいっぱい涙を溜めながら、私に沢山謝った。

 自分がストーキングの標的にならなければ、そんな事にはならなかった、と。

 ノリちゃんのせいなわけないじゃん…

「ノリちゃん…もう、アイツ来ないから…安心していいからね…」

 私達は静かに抱きしめ合いながら、涙を流した。



 そしてまた、月曜日になって…

 この日は、私がいつもの時間に【喫茶KOUJI】にやってきて、まだタツミくんが来てなかったので、久しぶりにイサミモーニングメニューにありつけた。

 でも、プレートが運ばれてきても、すぐに手をつけられず、食前のコーヒーを飲みながら、この1週間をボンヤリと振り返った。



 私…どうしたらいいのかな…



 涙がにじんでコーヒーがゆらりと揺れた時、窓の外で気配を感じた。



 え…どうして…



 ガタン

 私は外へ飛び出した。



「…よぉ」



 そこにいたのは

 ハジメちゃんだった





98/168ページ
スキ