traverse
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(★)
どうして…タツミくんがここにいるの…?
聞きたいのに、声が出ない。
こっちに来ようとしているサナダを、タツミくんは全身で食い止めている。
「な…んだよ、テメェはぁ? 正義の味方気取りかよ…?」
「うるさい! 黙れ! アンタこそなんなんだ!? これ、犯罪だろ!?」
いつもの優しいタツミくんじゃない、猛々しくて、コワイ。
サナダから解放されたのに、動けない私。
そんな私を一瞥すると、タツミくんはまたサナダと揉み合った。
「イッサあぁー!!」
よく通るタツミくんの、怒号。
それを聞いて、ボロッと涙が溢れて、やっとメイン通りへと走り出せた。
バキッと鈍い生々しい音がした。私はそれに振り向かなかった。
乱れた服を直しながら、倒れた自転車の所まで戻ってきた。
心臓がバクバクして、自転車をうまく起こせなかった。
漕いでいけそうもなかったので、そのまま横から押しながら、息絶え絶えに走った。
今思えば、なんでこの時に警察に駆け込まなかったんだろう。
ハジメちゃん
ゴメンナサイ
タツミくん
ゴメンナサイ
唇をガクガクと震わせて、そればかりを頭の中で唱えながら、家に帰った。
…