traverse

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 (★)

「…はぁ? キミなんかにも、ヤローがいるワケ…? ちっ…どいつもこいつも…」

 サナダの手がじっとりと汗ばんでいて、サナダの息が顔にかかって、気持ち悪い。

 サナダのぽってりした唇が近づいてきた。

 イヤ…!!

 私は咄嗟に、自分の唇を口の中に隠して、への字に結んだ。

 こんなヤツに奪われてたまるか。これは、ハジメちゃんにだけ許した大切な…

 サナダの唇の感触、気持ち悪い。

 ハジメちゃん。

 ハジメちゃん。

 ハジメちゃん。

 名前を心の中で連呼する。ハジメちゃんが助けに来れるわけがない、自分で何とかしなきゃいけない。ハジメちゃんへの想いをお守りにした。

 サナダは、キスを諦めた。いや、唇を諦めただけだった。

 サナダの唇はそのまま下へ降りて…鎖骨の下辺りでチュウッと強く吸った。

「ッ!!…」

 鋭い傷み。イヤな痕をつけられてしまった。

 私の顎を掴んでいた手が、その痕をズルリと撫でて、私の胸を…乱暴に揉み回した。

「いやあぁーーー!!」

 やめて。

 ハジメちゃん以外に触られたくない。

 頭の上で拘束されている両手を必死で動かすけれど、サナダの押さえ付ける力が馬鹿みたいに強過ぎる。

「ねぇ…マッサージしてもらった時から思ってたんだよね…キミ…おっぱい大きいよね…」

 そう言うとサナダはにやりと笑って、私のカットシャツのボタンを上から外し始めた。





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