traverse
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(★)
いっぱい歩いたから、展望台はエレベーターで登った(笑)
「うわあ…っ」
本日二度目の感嘆の声を上げる。暗いオレンジから紺碧に変わる様子を見る事が出来た。ポツポツと、町の灯りが灯りだす。
「はー、歩いた歩いた。疲れたなぁ」
下の売店で買ったアイスカフェラテをちゅーっと吸いながら、ハジメちゃんが言った。
「もー。だからエスカーで楽チンしたらって言ったのに。イヤだった?」
「…んなわけないじゃん…」
私の後ろから、手すりを掴んで私を閉じ込める。さっきの、囁かれたのを思い出して、頬がかあっと熱くなった。
気のせいかな? ハジメちゃんは、辺りが暗いと大胆になる。
「ハジメちゃん…人、いるから…」
私達の他にも数組、カップルがいる。おんなじような事してるけど、それでも恥ずかしい。
「んっ…わり…そろそろ帰るか?」
「うん…」
背中にハジメちゃんの温もりが無くなって、ちょっと寂しいななんて、私ワガママなのかな。
またエレベーターで下に降りる。
「勇実…こっち…」
「あ…っ」
ハジメちゃんに急に手を引かれて、死角になる物陰に身を潜める。
ハジメちゃんは後ろから私を抱きすくめて、灯台の壁にトンッと寄り掛かった。
私の目の前は、すっかり闇に包まれた海原。
遠くで、人の行き来の音…
「ま…って…ハジ…や…」
見られちゃう。こんな、【きたいわ屋】の裏口よりリスクの高い所で…ダメだよ…
言いたいのに、私の声を、ハジメちゃんが奪う。
顎を持ち上げて、唇を塞ぐ。
同時に、シャツの中に手を入れて、膨らみの尖端をいやらしく弄る。
「…ッ…ッ…ッ…」
必死に、声を抑えた。誰にも気付かれたくない。
「勇実…俺達…ひと月…経ったな…」
キスをしながら、ハジメちゃんが囁いた。
「ん…っ、そう…だね…」
「……」
…? ハジメちゃん? 黙っちゃった、どうしたの?
と思った瞬間、ハジメちゃんにクルッと半回転された。
ハジメちゃんの胸板に頬をうずめる形で押さえ付けられて…ハジメちゃんの、私の胸を弄っていた手がゆっくりと…背中を滑って…お尻と太ももを撫で回した。
ゾクゾクッと甘い痺れが走る。生地の薄いキュロットの裾が、ハジメちゃんの手の動きと一緒に捲れる…絶対、下着が見えてる。
「ハジメ…ッ…イヤ…ァ」
「やめた! 帰ろ!」
私が掠れた声を出したと同時に、ハジメちゃんがそう言ってバッと腕を伸ばして、私との距離を空けた。
「ハジメちゃん…?」
乱れた服を直しながら私が言うと、ハジメちゃんはバツが悪そうに頭を掻いて、
「勇実…ゴメンな…大事にしたいのに…俺、ブレーキぶっ壊れてるよな…
…好きだよ…」
そして絞り出すように、言った。
「ウン…知ってる(笑)」
分かってるよ。ハジメちゃんの気持ち、十分過ぎる程伝わってるよ。
ハジメちゃんに私のこのドキドキ、伝われ。
そんな想いを込めて、ハジメちゃんの腕にギュッと絡みついた。
ハジメちゃんはチュッと私の唇にキスを落として、
「さ、帰ろーぜ」
私を腕に絡めたまま、島を下り始めた。
…