traverse
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「うわぁ~!」
翌日、木曜日。
私とハジメちゃんは、少し遠くの海辺の町までやって来た。
電車を乗り継いで、最後に乗った電車が町の路面を滑走したのにも感動したし、そこを抜けて今、目の前に海と空が拡がって、大興奮の私。
そんな私の隣で、ふわぁ~っ、と大きなあくびをするハジメちゃん。普段ならまだ寝てる時間、がんばって早起きしてくれたんだね。
海と空の境界線がキラキラボンヤリ、とてもキレイ。
電車を降りて、海岸に向かった。人がごった返している海水浴場があるけれど、泳がない私達は素通り。
「ハジメちゃん、泳がなくてほんとにいいの? こういう所ではしゃぐの好きそうなのに(笑)」
「オマエなー、俺をどういうイメージで見てんのよ(笑)
まぁ、泳ぐのは好きだけど。今日はいいや。オマエとブラブラしてたい」
「そうなの? 水着のおねーちゃん見て目の保養にしたいとかないの?」
「ばっ…ナニおっさんくさいコトを…
…まぁ…オマエのは見たいかなぁ…でもなぁ…他のヤツに見せたくねぇしなぁ…モゴモゴ」
「えっナニ?」
「なんでもねーよ! さぁ行くぞー」
「ちょっとぉ、待ってよぉ」
早歩きのハジメちゃんに必死についていく。やっと横に並んで、ハジメちゃんの手をギュッと握ると、ハジメちゃんがビックリした顔でこっちを見た。
え、なんかマズかった? と思ったら、ハジメちゃんの指が私の指の間にスルリと入り込んで、ギュッと包まれた。
恋人繋ぎ。実は、初めて。うわ、ドキドキするよ。
ハジメちゃんを見上げると、ほんのり頬を染めて照れ笑いをしてた。
「あっハジメちゃん、アレ、なんだろ?」
「うん? なんだろな。行ってみっか」
舗装がしっかりしている所で、30mほど細かい石がズラリと並んでいた。足ツボロードというらしい。
靴を脱いで、ハジメちゃんと歩いてみる。
「うぎゃー! いったーい!(泣)」
「あ"あ"あ"~~~っ!(泣)」
ギャーギャー騒ぎながらへっぴり腰で石の上を歩く私達の横を、颯爽と駆けていく小学生達。
「えええ…? キミら、痛くないの…?」
泣きそうな顔でハジメちゃんが言うと、
「平気だよ。全っ然、痛くないよ」
さらりと言いのけて、向こうへ行ってしまった。
「…若いって、すげぇな」
「ハジメちゃん、おじいちゃんだもんね(笑)」
「オマエもだ! このへっぴり腰め!」
「あははぁ」
痛がりながらも、私達は足ツボロードを渡りきった。ツボが刺激されたからなのか、単にお昼を迎えたからなのか、おなかがキューッと鳴った。
「腹へったなぁ。なぁ勇実、食べたいのあるんだけど、いい?」
「ん? ナニ?」
「生しらす丼」
「あっいいな! ズルい、私も食べたい!」
「ナニ言ってんだ、一緒に食うんだろ(笑) 店、あの島の方だから」
また恋人繋ぎをして、潮風を受けながら、孤島を繋ぐ大きな橋を渡り始めた。
…