次の月曜日には、曲がすっかり出来上がっていて、私とタツミくんは、【喫茶KOUJI】で額を付き合わせながら歌詞を旋律にはめていった。

　曲が生まれて、その場で早速タツミくんがフルで歌って、それをケータイに録音した。

　いつでも練習出来るように、私のパート、タツミくんのパートも、ケータイに入れて貰った。

　打ち合わせのない日はひたすら、シャカシャカとイヤホンでタツミくんが入れてくれたのを聴きながら、自分も歌った。

　曲作りをするって決まってから、2週間弱。振り返ってみれば、なんて短期間だったんだろう。でも、1回1回の打ち合わせはとても濃い時間だった。



　タツミくんの都合により、日曜日の宵の口に披露する事になった。

　ライブが終わり次第、実家に向かうのだという。

　これの前の金曜日、【きたいわ屋】のおじさま達の前で何度も披露した私達。

　おじさま達は拍手喝采をしてくれたけど、私は不安で、もう一度、もう一度と、何度も繰り返した。

　タツミくんは何も言わず、ひたすら付き合ってくれた。

「イッサ、帰ったら大根ハチミツね(笑)」

　そう言い残してタツミくんは先に帰り、最後の打ち合わせは終わった。

　その後、恒例になった…ハジメちゃんとの裏口での秘め事。

「やっと…終わったな…」

　私の肌に触れながら、ハジメちゃんはつぶやいた。

　ハジメちゃんのヤキモチを一身に受けて…私はタツミくんともう深く関わったらダメなんだと、ボンヤリ考えた。

　もう、ハジメちゃんを不安にさせたら、ダメだ。



　そして、当日。

　いつもと違う曜日、時間帯なのに、ナギサをはじめ、いつも聴きに来る人達が集まって、加えて通りすがる人達も、次々と足を止めた。

　私とタツミくんがまた一緒にいる事をよく思ってないんだろう、ナギサがまた、鋭い眼差しを向けていた。

「イッサ、緊張してる？(笑)」

「そりゃそーだよ！　こんな人いっぱいなんて、聞いてないよ！」

　パニック寸前。タツミくんは余裕そう、と思ったら、

「俺も。はー、緊張するー」

　なんて言う。私だけじゃないんだって思ったら、スッと気持ちが楽になった。

「でも…まぁ…イッサが一緒だし。いっぱい練習したし。1曲だけだし。やりますか」

　タツミくんが拳を突き出したので、私もキュッと拳を握って、コツンと合わせた。

　合わせながら、

「食べた？　大根ハチミツ(笑)」

　とタツミくんが言うので、

「ウン、食べた食べた(笑)」

　ぷっと吹き出しながら答えた。また緊張がひとつ、ほぐれた。





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