traverse

58/168ページ

前へ 次へ


 商店街の最寄りの駅まで歩いていく事になった。

 今まで、タツミくんがどこに住んでいるかなんて知らなくて、聞くこともしなかったけど、今日色々話していく内に、スタジアムの最寄り駅から3駅ほどいった所に住んでいる事が判明した。

 だったら、スタジアムの最寄り駅でバイバイでもよかったのに。商店街の駅からだと、タツミくんの駅に行くには乗り換えしなきゃならないから、めんどくさいんじゃ? そう思ったけれど、

「商店街まで送っていくから。女の子を夜道ひとり歩かせられません。商店街からは、おひとりでどうぞ。どうせ、ハジメさんのとこに顔出しに行くでしょ?(笑)」

 タツミくん、私の保護者ですか?(笑)

 まぁ、もう22時になる勢いだし、ごもっともだな、と思い、こうして歩いている。

「んっ?」

 頬に、何か当たった感触。

「イッサ? どうした?」

「今、雨? 降ってきたような?」

「え、うっそ」

 ボタッ。ボタボタボタッ。

 突然、大粒の雨が地面を打ち付ける。

 シャワーに打たれたみたいに、私達はあっという間にずぶ濡れになった。

「ひゃあああ! 今日、雨降るなんて言ってたっけー??」

「あっ、イッサ、あそこ、コンビニで傘買おう」

 ちょうど、道路の向かい側にコンビニがあった。車に気を付けながら、横断歩道のない所を足早に横切る。

 辿り着いて、中に入ろうとしたら、

「待って。ストップ」

 後ろからタツミくんに手首を掴まれた。

 ビックリして振り向いたら、同時にタツミくんのボディバッグが正面に飛んできた。

「ここにいて。それ持ってて」

 財布だけ持って、タツミくんはコンビニの中へ入ってしまった。





58/168ページ
スキ