traverse

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「それで、席はどっち側?」

 そう言って、タツミくんは私の持っているチケットを覗き込んだ。

「えーっと、レフトスタンドって書いてる」

「ふーん。じゃあ、コッチ」

 タツミくんがスタスタと歩いていってしまうので、慌ててついていく。

「ちょっ、とっ、待って、タツミくん? 分かるの? なんで?」

「ん? フフ、どうしてでしょう。
 あ、イッサ? 応援グッズあった方がいいでしょ? あそこで買ってこうよ」

 ゲートをくぐってすぐ目の前に売店があったので、私達はメガホンと応援バットを買った。

「お弁当もここで買っとこう」

 また、スタスタと歩いていくタツミくん。

「え? ちょっ、とっ、もう、待って。お弁当なら、席でも買えるでしょ?」

「ん? あー、売り子から買ってもいいけど…おなかすいたって時になかなか来なかったら、イヤじゃない? ごはんは、手元に置いとこうよ(笑)」

 それもそうか、と思い直して、タツミくんと並んでお弁当のショーケースを眺める。

「やっぱりさぁ、○○のシューマイ弁当だよね。懐かしいなぁ。俺はコレにする」

「あ、私もそれにする。有名なのに、一度も食べた事ないんだぁ。タツミくんは、あるんだね?」

「ん? フフ、むかーしね」

 出た、タツミくんの含み笑い。こういう時のタツミくんは、本当に嬉しそうな顔をする。

 昔、来た事があるのかな? だから色々知ってるのかな? いい思い出なんだろうな、きっとそうだ。

「あ、でも飲み物とかは、席で買おうよ。私、売り子から買ってみたい(笑)」

「わかったわかった(笑) さっ、行こーか」

 袋をガサガサいわせながら、私達はスタンドへ入っていった。





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