その後、ハジメちゃんとのお付き合いは順調に進んだ。

　休みが合わないから、丸一日会う事は出来ないけれど、学校やマッサージの仕事の帰りに、少し【きたいわ屋】に顔を出して、たわいもない話をしたり、

　ハジメちゃんが休みの木曜日は、私の学校が終わる夕方に待ち合わせして、近くの公園でお散歩したり、一緒に夕飯を食べに行ったりした。

　もちろん【きたいわ屋】でも、ふと二人きりになったりすると、ハジメちゃんが不意打ちでチュッとする事もあった。

　その度私は、顔を真っ赤にさせてハジメちゃんの腕をはたいた。

　そんな様子すら、ハジメちゃんは面白がっているように見えた。



　そうこうしている内に、本格的に夏になった。



　ある土曜日のマッサージ勤務で、

「イサミちゃん、イサミちゃん」

　店長の潤子サンに手招きされた。

「どうしたんですか？　潤子サン」

「イサミちゃん、野球に興味ある？
　知り合いに平日ナイターのチケット貰ったんだよ。
　次の週の平日どれか1日、自由に入れるみたいなんだけどさ、私は行かれないし、ノリちゃんにも話してみたんだけど、都合がつかないみたいで。
　よかったら、【きたいわ屋】の息子と行ってきたらどうだい？」

　潤子サンが私の顔の前でヒラヒラとチケットを振る。

　ハジメちゃんと野球観戦かぁ。楽しそうだなぁ。一緒に行きたいなぁ。ハジメちゃんの事だから、きっとすごい大声で応援するんだろうなぁ。

「いただきます！」

　はしっと、揺れるチケットを両手で挟むと、潤子サンがガハハと笑った。

「楽しんでおいで」

　今度の木曜日に行ってもいいか、ハジメちゃんに聞いてみよう。





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