その日の勤務はいつも通りに時間が過ぎて、いつものようにハジメちゃんの味噌ラーメンを頂いて、帰路についた。

「おつかれ。また金曜なー」

　違う事と言えば、私が上がるの時のハジメちゃんの笑顔が、やたら眩しい事。



　カッシャン、カッシャンと、ペダルを漕ぎながら、昨日と今日の出来事を振り返った。

　ハジメちゃんに好きと言われて、私もキライじゃないから、付き合うって事に拒む理由がなくて、OKをした。

　ハジメちゃんとなら、楽しく過ごせる。そう思ったから。

　これで、いいんだよね。

　…やっぱり、何かがつっかえてる。どうしよう。



　そうこうしてる内に、タツミくんのいる例の場所に着いた。

　私はタツミくんの前で自転車を止めて、サドルに跨がったまま話しかけた。

「こんばんは、タツミくん」

「ナニ、イッサ、なんでそんな暗い顔してるの？」

　タツミくんが目を丸くして、ベンチから立ち上がって私の傍に来た。

「え？　そう？　そんな顔してる？」

「してるよ。ナニ？　もしかして、昨日のデート、楽しくなかった？」

「ううん！　楽しかったの。楽しくて…
　…私、ハジメちゃんと付き合う事になったよ」

　おぉー！　という顔を、タツミくんがした。急展開にビックリしたかな？

「そうなんだ。いいんじゃない？　お似合いだと思うけど」

　お似合い？　周りから見たら、そんな風に見えるのかな。

　しばらく、お互いに無言。視線もなんとなくウロウロ。BGMで、タツミくんが適当にギターを鳴らす。

　急にピタリと音が止んで、はっと顔を上げると、タツミくんが真っ直ぐに私を見ていた。



「つかぬことを聞くけど…
　もしかしてイッサ、
　お付き合いは初めて？」





…