「うん、平気だよ。まぁ、映画館で観るのは初めてだけど。大迫力だろうねぇ。ハジメちゃんは？」

　私がそう言うと、ハジメちゃんは苦笑いをして、

「はは…ちょっと、なぁ～…」

　最後の方が聞き取れないくらい、声も体も縮こまってしまった。

「えっダメなの？　じゃあ、なんでそれにしちゃったのよ」

「他のはあんま楽しそうじゃなかったんだよ…時間もちょうどよかったし…朝っぱらからなら、そんな恐くならないかなぁって…
　まぁ、いいじゃねぇか！　もう始まるから、入るぞ！
　あ、俺、朝メシまだだから、ちょっと買ってっていい？」

　話をすり替えたかったのか、ハジメちゃんは一気に喋って、映画館の売店でホットドッグやらポップコーンやら飲み物やら買い込んだ。ご丁寧に、私の分まで。

　私は、食べてきたんだけどな。ま、頂くけどね(笑)



　スクリーンに入った時は、もうすでに冒頭シーンが流れていた。

　平日だけあって、席はガラガラ。でもそれでも、ポツポツと何人かは座っていた。

　食べ物をつまみながら、映画に魅入る私とハジメちゃん。

　ひときわ恐いシーンになると、ハジメちゃんが「あ"ぁ"～っ」といちいち情けない顔を私に見せるから、笑いをこらえるのに必死。恐いんだか面白いんだか、分からなくなった。

　終盤、とても感動する場面があって、思わず涙ぐんで鼻をすすると、横からハンカチを差し出された。

「しょうがねぇなぁ、ほら」

　そんなハジメちゃんも、ちょっとは泣いたんでしょう？　涙声になってる(笑)





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