翌日。月曜日。

　カラカラン♪

　【喫茶KOUJI】の扉を開けたのは…タツミくん。

「アレッ！？」

「おはよー、タツミくん。　…ズズズッ」

　いつもの窓際の席、ではなく、カウンター席で食後のコーヒーを頂きながら、タツミくんの声に振り返った私。

「イッサ？　何でこんなに早いの？　なんでこっちの席にいるの？」

　目を丸くしながら、タツミくんが私の隣に座る。

「あー。今日ね、朝イチで映画観るの。　…ハジメちゃんと」

「ふーん？　そうなんだ？　あ！　もしかしてそれが、誕生日プレゼント？」

「うーん？　どうなんだろう？　あ、いや、物はちゃんと昨日渡したよ。
　あー、喜んでくれたかなぁ？　今日逢って、その反応を見るのが、なんかちょっとヤダ」

　はあ～、と深い溜め息をする私に、タツミくんがケラケラ笑う。

「ナニ言ってんだか。大丈夫に決まってるでしょ。
　それにしても、ふーん、おデートですねぇ」

「はっ？　デート…？
　ちがう、ちがうから。
　…やだなあ、タツミくん。からかわないでよ」

　タツミくんがニヤニヤして言うから、反射的にバシッと二の腕をはたいた。

「あたた。まあ、いいけど。映画朝イチだって？　そろそろ出ないとマズイんじゃない？」

「あっ！　ほんとだ、行かなきゃ…マスター、ごちそうさま！　タツミくん、またね！」

　腕時計を見て慌てた私は、モーニングのお代をカウンターに置いて、外へ飛び出した。

　お店の窓を見ながら、駅の方へ走った。

　窓の向こうで、タツミくんがコーヒーを飲みながら、ヒラヒラと手を振っていた。

　それだけでなんか、心が落ち着いた。

　私がカウンターの席に座ったのは…タツミくんに見送って貰いたかったからだと思う。





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