【ラーメン居酒屋きたいわ屋】は、18時開店。

　居酒屋と言っても、基本は家系のラーメン屋。プラス、ちょっとお酒が飲める。なので、お客さんはほとんど飲んべえ。

　カウンター席が10席、二人用のテーブル席がふたつの、こじんまりとしたお店。

　今日は花金だから、あっという間に席が埋まる。

「イサミちゃーん、こっちに生、みっつね」

「りょーかぁい」

　何故か、お客さんの方が勝手に注文を飛ばす。これまで、席まで注文を取りに行った事は…片手で数えられるほどしかない(笑)

「あれっ、イサミちゃん、オデコのそれ、どーしたの？」

「えっ！」

　お客さんに言われて、慌てて片手でおでこを覆う。

　デコピンの痕。

「あははぁ、ちょっと、ぶつけちゃって」

　満面の笑顔を見せてから、カウンターの奥のハジメちゃんをキッと睨んだ。

　視線に気付いたハジメちゃんは、わざとらしく、ピーピピーと口笛を吹いて、お客さんの笑いを誘った。

「イサミちゃんがいると、華やぐなぁ。週2じゃなくて、もっと入ってくれればいいのにー」

「すみません。色々、やる事が多くて」

「そうでさぁ、イサミちゃんは将来の為の勉強中だから。
　ここには、まあ、少し手伝って貰って、ごはん食べてって貰ってるって感じですわ」

　大将が柔らかく笑いながら、私の代わりに説明してくれる。

「そうかぁ、マッサージだっけ。潤子チャンとこで教えて貰ってるんだったっけ？」

「はい。学校にも行ってるけど、実際にお店で体験するのも勉強になるから。明日、行かないと」

「うんうんうん。がんばれよぉ。若いっていいなぁ」

　こうして和気あいあいとお喋りをしていると、あっという間に時間が過ぎる。

　私のあがりの22時になった所で、ハジメちゃんが言った。

「勇実。そこのテーブル席に座んな」





…