山の上の図書館に到着した頃には、陽が沈みかけていた。

　閉館時間までにはまだあったけれど、ハジメちゃんが言った通り、ここは大きくて広すぎて…ちょっと迷子になりかけた(泣)　今日は自転車じゃないし、暗くなる前に家に着いておきたかった。

　なんとか、整体の参考書が並んでいる書棚に辿り着き、2、3冊手に取った。

「あ…そうか…貸出カード作んなきゃ…」

　身分証明があるのを確認して、カード作成の申込書が置いてあるカウンターに行く。

　ガラスの天板にはめ込まれた書き込み例を見ながら、必須箇所を埋めていった。

　…ん？

　私の右側の足元に、ギターケース。

　そこから、催眠術にでもかかったみたいに、ゆっくりと視線を上げていく。

　…あーー！！

　黒いチューリップハット。あのタツミくんだった。

　なんでここにいるのっ…！？

　あの通りでない所で出くわしたから、ビックリして口がパクパクしてしまった。

　そんな私の様子に気付いて、はじめ、目だけ向けてすぐに紙に視線を戻して、そのまたすぐ後に、今度は顔もしっかりこちらに向けた。



「あ…
　ピザトーストとラーメンの人…」



　彼がボソリと呟いたのを、私は聞き逃さなかった。





…