traverse

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 それから…季節を沢山巡った。



 その間私とタツミくんは、もっぱらエアメールで、時々電話やメールで、やりとりを飽きることなく続けた。

 私が22歳、タツミくんが24歳を迎える頃、海外でも無料通話が出来るアプリの存在を知った。

 それは私の持っているケータイでは無理だったので、これを機に私は端末を買い換えた。(タツミくんのは元々対応端末だった)

 日本時間で5月25日を迎えた瞬間、

「イサ…? 誕…おめ…とう!」

 やっぱりこれだけの距離、ブツ切れの通話だったけど(笑) 誕生日にタツミくんの声が聞けて、本当に嬉しかった。耳もココロもくすぐったかった。

「ふふっ…タツミくんも、24歳、おめでとう」

 この日は沢山お喋りしたけれど、やっぱりブツ切れで会話がままならないので(笑)、この無料通話は月1程度しか利用しなかった。

 タツミくんから届く手紙が楽しみだった。タツミくんの文字、現地の切手、時折一緒に入れられたタツミくんの写真。

 電話もメールもいいけど、この手段の方がより温かみを感じて好き。



 2年かけて、私は専門学校を卒業する事が出来た。

 卒業する前に、私はまた、あの商店街の近くで一人暮らしを始めた。今度は地下鉄の駅に近い所で部屋を借りた。

 約束通り、潤子サンのお店で正式に働かせて貰える事になった。週休二日、朝から晩まで、ひたすら施術。卒業出来たからって、いきなり一人前ってわけじゃない。もっともっと経験を積んで、店を構えられるぐらいになりたい。

 潤子サンもその気みたいで、マッサージの経験だけじゃなく、営業法なんかも一緒に教えてくれる。いつかはのれん分けをしたいなんて、笑って話していた。



 そんな新生活が始まって、リズムも掴めてきた頃…

 タツミくんと離れてから、1年半が過ぎようとしていた。まだ、タツミくんは帰らない。



 勤務の昼休憩に、たまに【きたいわ屋】でランチをする私。

 【きたいわ屋】は、今年に入ってから営業形態を変えて、お昼はラーメン屋、夜は居酒屋という二毛作のお店になっていた。

 ガラッと引き戸を開けると、いつもと変わりないハジメちゃんの笑顔が飛び込んできた。



「お、勇実ぃ。
 誕生日おめでとう」





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