traverse
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(★)
「わ…ぁ」
部屋に入ってみると、アジアンテイストの洒落た空間が目に飛び込んできた。
ダブルサイズのベッド。二人掛けの柔らかそうなソファー。テレビに冷蔵庫。お風呂までなんかやたら広い。
キョロキョロしてたら、すでに上着を取っ払って荷物をクローゼットに入れたタツミくんに、
「挙動不審(笑)」
着ていた白いダウンジャケットのジッパーをジーッと下ろされた。
「わ、ちょっ、いいよ、自分でやるから」
急に前を開かれて、パニックになる。タツミくんを向こうに押して、上着を脱ぎ荷物をしまった。
タツミくんはテレビを点けて、ソファーに身を沈めた。
「あ。チョーふかふか」
「え? ほんと?」
タツミくんの隣に座る。あ、ホント。なんだこれ。
肘掛けもまた枕みたいで、普通にベッドとして使えそう。
なんて思って、肘掛けに頭をもたげたら、すっごい気持ちいい。
「ふはは。このまま寝ちゃいそうだよ(笑)」
「だめ」
「え」
タツミくんの方へ顔だけ向けると、タツミくんがすぐそこで、ソファーの背もたれと淵に手を置きながら、私に覆い被さるように、上から見つめていた。
金縛りにあったみたい。タツミくんから目を逸らせない。
タツミくんの体重が、徐々に私にかかる。
私の背中とソファーの間にスルリと手を滑らせて、優しく抱きしめた。
「ドキドキしてるの…俺だけ?」
タツミくんの胸にぴったりくっつく私の耳、タツミくんの鼓動、そして骨を伝って響くタツミくんの声が、とても心地よかった。
「ううん…私だって…すごくドキドキしてる…」
掠れ声で言うと、タツミくんの片手が、遠慮がちに…
私の胸の膨らみに置かれた。
…