traverse
147/168ページ
(★)
「えっ!」
「ちょっ…そんなビックリしなくても」
タツミくんが苦笑いをする。
「だっ…て。
タツミくん、よりどりみどりそうなのに」
「(笑)ナニソレ」
「モテたでしょーに」
「(笑)(笑)そんなことないですけど。
ギターに夢中だったからかな…そんな風になった事は、なかったんだよね…
って、ナニ言わせるの」
「じゃあここ、どうすればいいかってのも、分からない?」
「イヤ、知ってる(笑) イッサ、好きなの押していーよ」
「え? 選んでいーの?
じゃあ…コレ」
なんとなく落ち着きそうな部屋のパネルを、そっとタッチする。
すると、パッと画面が暗くなって、別の所でジャラッと音がした。よく見るとすぐそこに小さな窓口があって、部屋の鍵が置かれていた。
「行くよ」
タツミくんはその鍵を取って、また私の手を引いて、エレベーターに乗り込んだ。
「ねぇ…なんで知ってるの?」
「うん? そりゃあ…友達から聞いたり…テレビで観たり…なんだり…
もーいいでしょ(笑) イッサはもう、聞くのナシね」
「えーっ!」
「くくくっ」
エレベーターの中で肩を押し合う。ムードもへったくれもない。
と思ったら、タツミくんが肩を押すフリをして、唇を重ねてきた。
ズルい。
そんな事されたら、
ボーッとなるしかないじゃん。
…