traverse

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 (★)

「えっ!」

「ちょっ…そんなビックリしなくても」

 タツミくんが苦笑いをする。

「だっ…て。
 タツミくん、よりどりみどりそうなのに」

「(笑)ナニソレ」

「モテたでしょーに」

「(笑)(笑)そんなことないですけど。
 ギターに夢中だったからかな…そんな風になった事は、なかったんだよね…
 って、ナニ言わせるの」

「じゃあここ、どうすればいいかってのも、分からない?」

「イヤ、知ってる(笑) イッサ、好きなの押していーよ」

「え? 選んでいーの?
 じゃあ…コレ」

 なんとなく落ち着きそうな部屋のパネルを、そっとタッチする。

 すると、パッと画面が暗くなって、別の所でジャラッと音がした。よく見るとすぐそこに小さな窓口があって、部屋の鍵が置かれていた。

「行くよ」

 タツミくんはその鍵を取って、また私の手を引いて、エレベーターに乗り込んだ。

「ねぇ…なんで知ってるの?」

「うん? そりゃあ…友達から聞いたり…テレビで観たり…なんだり…
 もーいいでしょ(笑) イッサはもう、聞くのナシね」

「えーっ!」

「くくくっ」

 エレベーターの中で肩を押し合う。ムードもへったくれもない。

 と思ったら、タツミくんが肩を押すフリをして、唇を重ねてきた。

 ズルい。

 そんな事されたら、

 ボーッとなるしかないじゃん。





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