traverse

144/168ページ

前へ 次へ

 (★)

 言ったらダメかな?

 タツミくんに触れてほしい…って。

「タツミくん」

 こんな界隈で立ち止まると変だから、ゆっくりと歩きながら…タツミくんに言った。

「うん…?」

「あのね」

「うん」

「私、タツミくんが好き…」

「え…? あ…ウン…」

 タツミくんの頬が赤く染まった。私からの好きに、すごく照れてる。カワイイ。

「もう平気だから…やな思いなんてしないから…
 だからね…あのね…
 私…タツミくんに…」

「え? あっ、わーっ! イッサ! ストップ! ストーップ!」

「むぐっ」

 タツミくんの手で口を塞がれた。前にもこんな事、あったような(笑)

「…俺、ダメじゃん。
 イッサにこんな事言わせるなんて、ダメすぎる」

 後頭部をガリガリと掻いてうなだれる、タツミくん。

 ひとつ深呼吸をして、私の方に向き直った。

 真剣な瞳。吸い込まれそう。

「イッサ」

「うん…?」

「イッサが好き。
 ねぇ、止めなくて、いい?
 イッサの事、忘れないし、
 俺の事、忘れさせない。





 …イサミを抱きたい」



 タツミくんのストレート過ぎる言葉が



 私の気持ちの泉に落ちて



 ザァーッと溢れたお風呂みたいに



 せき止めようとしても



 好きがもう止められなかった





144/168ページ
スキ