traverse
138/168ページ
タツミくんには、泣いてるところばっかり見られてる気がする。
タツミくんが私の手を離して、頬を包みながら、親指で涙を拭ってくれた。
タツミくんの手、冷えてるなぁ。
そんな事を思いながら、されるがままにしていると、
「ひぁっ」
タツミくんの手が、私の耳たぶをフニフニと揉んでくる。
「ちょ…っと、冷たっ…いんですけど!」
たまらず首を竦めた。
「んー? イッサの耳、気持ちいーね。もっと触りたい(笑)」
「や…だから…っふふ、あっはは!」
涙が引っ込んで、下を向いて笑っていると、
「笑ってるの、好き」
「え…ッン」
タツミくんが急に真顔になって、そう言いながら下から掬うように…唇が触れた。
掠るようなキス。それなのに、近づいてくるタツミくんの顔、唇にかかるタツミくんの息に、頭がのぼせそう。
耳がくすぐったいのと、恥ずかしいのとで、首を竦めたまま後ずさりをしたら、タツミくんが追いかけてくる。
「…逃げないでよ…」
今度は耳を覆われて、同じ高さの目線で、2秒くらいのキス。
離れる時にリップ音が響いて、頬がカーッと熱くなった。
タツミくんもそれが恥ずかしかったのか、顔を赤くしてニヒッと笑った。
私も、笑ってるタツミくんが、好き。
冷えたタツミくんの手に、そっと自分の手を重ねた。
「はー…あったか…」
「ふふ…寒がりですねぇ。そんなに着込んでるのに?(笑)」
「えーっ…イッサは、平気? 今日はホント寒いって。
…ねぇ…あっためてよ…」
タツミくんが背筋を正して、私の肩に腕を回した。
急に固定されてビックリした。
タツミくんの胸元に顔をうずめられて、ドキドキする。
顔を上げると、目が合った。
タツミくんの顔がまた近づいてくる。
私は手をタツミくんの背中に回して、目を閉じた。
上からのキス。何度も唇を甘噛みし合う。
いっぱいリップ音が鳴った、でも今度は気にならなかった。
「イッサぁ…大好き…」
合間にタツミくんが掠れ声でつぶやく。
タツミくん、それは、ズルい。
体温が上昇する。
「ンッ…私も…す…ンン…」
ほら、言わせてくれない。やっぱりズルい。
空から雪が舞い始めていた。それも、気にならなかった。
タツミくんの唇に、夢中になっていた。
…