traverse
127/168ページ
「あ、髪になんかついてる」
モーニングを食べ終えて、食後のコーヒーをたしなんでいると、タツミくんが指を指して言った。
「あ? ホント? どこ?」
「あー、待った待った。じっとしてて。
ありゃー、なんだこりゃ。絡んでる」
タツミくん、絡まった髪と格闘(笑)
「ふふ…お手数かけますね(笑)」
「いーえー。イッサ、細毛で猫っ毛だね。だから絡んじゃうんだよー…」
「……」
チラッと、横目でタツミくんを見る。
タツミくんの顔、すごい近い。目を細めて、むーと口を尖らせながら、髪に絡んでいるゴミを丁寧に取り除いてくれてる。
そんなタツミくんが面白いと思う気持ちが半分。
もう半分は…なんなんだ、この状況? というパニック。
タツミくんの指が私の髪を擦るたびに、なんかこう…なんだコレ。
ドクドクッ…ドクドクッ…
また。心臓が、ウルサイ。
「よし、取れた(笑)」
「へ? あ、ありがと。はは、ナニ、タツミくん。そのやったぜ! みたいなカオは(笑)」
「えー? だって、うまく取れたでしょ。スゴくない?(笑)」
そう言うとタツミくんは、指で髪が絡んでた所を梳いた。
「っ…」
ビックリした。今、心臓跳ねた。
「ハイハイ。お疲れ様でしたね(笑)」
平静を装う。私、おかしい。タツミくんに気付かれたくない。
タツミくんはひと仕事を終えて、満足そうにコーヒーをすすっていた。
いつもの【喫茶KOUJI】でのやりとりなのに…
これまでになかった違和感。タツミくん。暴れる私の…心臓。
…どうしちゃったんだろう。ヘンだよ。
…