traverse
121/168ページ
窓からの明るみで、目が覚めた。
いつの間にか、布団の中で眠っていた。
「あ…? タツミくん…?」
この布団は、タツミくんが寝室から運んできてくれたに違いなかった。
私はいつまで、タツミくんにもたれ掛かっていたんだろう。
タツミくんが包んでくれていた手を、そっと握りしめた。
感触を、まだ覚えている。
「タツミくん」
返事はない。
ダイニングテーブルに、昨夜は無かったレジ袋が置かれているのを見つけた。
その横に、メモが置かれていた。
この紙、見た事ある。タツミくんが歌詞を書き留めておくのに使っている、ノートの切れっ端。
【よく眠ってたね。
これから仕事があるので、いつものモーニング食べてから行きます。
ごはん、適当に買ってきた。
食べられそうなら食べて。
ゆっくり
元気になりな。】
袋の中には、おにぎりやサンドイッチ、ドリンクが入っていた。
まだ…【喫茶KOUJI】には顔を出せそうにない。
私は、タツミくんの気遣いを有り難く頂戴した。
昨日は…日曜日だったんだな…
タツミくん、日曜日も歌う事にしたんだろうか。
そんな事を考えながら…タツミくんが買ってくれたおにぎりを、少しずつかじった。
※よければこちらもどうぞ
→【traverse】中間雑談・10
…