タツミくんが、はっと息を飲んだのが分かった。

　タツミくんを見る。

　タツミくんも私を見る。

　私の視界がぼやけて…タツミくんの姿も歪んだ。

「肺炎だったって。
　ずっと、隠してたって。勇実に心配かけたくないって、おばあちゃん言ってたって。

　いつもニコニコで…
　私、甘えてばかりでちゃんと見てなかったんだ…
　一番近くにいたのに…
　週末だけじゃなくて…もっと…一緒に…いたらよかった…

　おばあちゃん…
　一人で苦しかった…？
　寂しかった…？
　なんにも分かんない…
　最期…お話出来なかった…ううう…っ。

　マッサージ…もう…イミないんじゃないかなぁ…っ。
　…おばあちゃん…いないんだもん…っ。



　…死んじゃった…死んじゃった…あああ…！」



　全く出なかった涙が、出た。

　ボタボタボタッと地面に落ちて、コンクリートに染み込んだ。

　指や手の甲、手首で必死に拭うけれど、全然追いつかない。

　すると、私の目の前が陰って、同時に私の体が突然固められて、全身に温もりが駆け巡った。



　タツミくんが



　私をきつく抱きしめている



　この状況に、当然ビックリする。

　一瞬涙が止まって、

「タツミくん？　やめて。離して。大丈夫だから」

　タツミくんの胸を押し返す、でも、ビクともしない。

「大丈夫じゃない。
　今まで、泣けなかったんでしょ？
　今、やっと泣けたんでしょ？
　いいんだよ。
　今ここで、泣き喚いてしまいなよ」

　私の背中と頭の後ろを、強く押さえ込みながら…タツミくんは言った。





「俺も、そうだったから。



　姉ちゃん、亡くなったから。



　…今年の、６月に」





…