雑踏の中のふたり
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つば広の麦藁帽子を片手に、夏の学生服を着たポニーテールの女の子がやって来た。
高志と同じ歳か、ちょっと下か。
目がくりっとしていて、でも尻上がりの眉のせいか、とても凛としてるように見えた。
肌は白かったけれど、他の孤児達よりは顔色は好かった。
少女は高志の持ち場の少し斜め後ろに茣蓙を敷いて、背負っていた風呂敷を広げた。
親の物なのか、着物や、草履や下駄、革靴、眼鏡、分厚い文学書、色々な物を並べた。
そして無言でしゃがみこんで、客が来るのを待った。
高志は、突然商売敵が現れた事に腹を立てたけれど、自分と同じ靴磨きではなかったことに免じて、少女を追い出す事はしなかった。
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