雑踏の中のふたり
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「う…そだ…ろ…?」
千晴の鼓動の間隔が開き過ぎている
高志の震えが止まらない
千晴は高志の頬を両手で包んで言った
「…言わなくて…ゴメンねぇ…
…心臓の…病気…ずっと前…から…
…親戚に…疎まれたのも…それのせいで…
…薬…も…切らしちゃっ…て…
…お父さんも…お母さんも…コータも…いない…なら…
…この駅に…着いた時…持ち物…着る…ものも…全…部…売って…
…死んで…しまおうと…思っ…た…
…でも…」
「いいから…! もう、喋らなくて、いいから…!
…ちは…る…なん…で…
…俺…気付かなかった…?」
「…たか…し…がいて…
…好き…に…なっ…てしまっ…て…
…シアワセ…イッパイ…で…
…生きられ…そう…な気が…して…」
「も…いい…いい…から…」
「…た…かし…最…後…
…唇…チョーダイ…?」
「…っ…最…後…とか…言う…な…」
「…お…ね…がい…」
震える唇を
青ざめた千晴の唇に重ねた
ふうぅっ…と嗚咽を漏らしながら
離れた時
千晴がにこっと笑って
すうっと息を吸って
はぁぁ…と細く小さく息を吐いて
それきり
千晴は
呼吸をしなかった
「…ちはる…ちはる…ちは…っ…」
段々冷たく固くなっていく千晴の体を抱きながら
高志は千晴の名前を呪文のように繰り返し呻いた
蕎麦はすっかり汁を吸って伸びきって
無情にも
新しい年がやってきた
…