雑踏の中のふたり

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 (★)

 一旦離れて、見つめ合った。

 千晴の、潤んだ大きな瞳。

 今ので、濡れた唇。

 磁石の様に引き合って、また唇が重なる。

 ちゅ…ちゅ…ちゅ…

「…ンッ…ゥン…」

 卑猥な水音。千晴の艶かしい声。それを出している、千晴のかわいくて柔らかい唇。

 虜になる。

「…コータ…ってヤツとも…
 …こんな…してた…?」

 急に嫉妬心が沸いて、千晴に意地悪な事を聞く。

 顔を真っ赤にさせて、千晴はフルフルと首を横に振った。

 俺が、最初なんだ。俺も、千晴が、はじめて。

 そう思った途端、さっきより愛しさがさらに込み上げて、さっきより激しく、千晴の唇を貪った。

「…ヤ…ァ…たか…し…」

 切なそうに、高志の両手に自分の手を添えて、千晴が喘ぐ。

 それが、高志をますます興奮させた。

「…ち…はる…コータ…忘れて…
 …ごめ…ん…ちはる…ゴメン…

 …俺…ちはるが…好き…」





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