雑踏の中のふたり
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ところが少女は、突飛な行動に出た。
おもむろに高志に背を向けて、もぞもぞと体を動かすと、スルッと彼女の着ていた半袖のシャツが肩から滑り落ちた。
突如あらわになった、少女の華奢な背中。肩甲骨、背骨の線。脇から僅かに見える、胸の膨らみ。
見たらいけないと思うのに、高志は視線を逸らす事が出来ない。
それなのに、少女の行動はまだ続く。
横のジッパーを下ろして…ストン、とスカートが落ちた。
下着から伸びる、白くて細い脚。とても、女らしい形をしていた。
少女は、下に落ちたシャツとスカートを綺麗に畳んで持ち上げると、くるっとこちらを向いた。
「!!!」
やばい。見てたの、軽蔑される。
そう思っても、高志の体は動けなかった。
少女は…胸の所に、あの大事にしてるらしいつば広の麦藁帽子をぶら下げていた。
…ほっ。
全裸を晒け出してるんじゃなくって、心底ほっとした。
向こうが勝手にそうしたんだから、こっちに非はないはずなのに。
高志の心臓が無駄に暴れた。
少女はしゃがみこんで、シャツとスカートを茣蓙に置いて売り物とした。
高志が見ていたのなんておかまいなしに、麦藁帽子をギュッと抱え込んで、客を待った。
目を伏せたまま、高志とは目を合わさなかった。
…