悠の詩〈第2章〉
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「うわーあ、見ろよ柳内。ここでこんなキレイなの見れるんだなー?」
俺はいつもは駅から家へ(学校へも)帰る時は、駅の裏から出て山を越える道を使って行くけど、この日コタ先生の後を付いていった時は、表の大きな街道へ出てすぐに一本外れた裏道に入った。
そこはこの町の川が道に沿うように流れていて、普段は滅多に通らない所だから知らなかった、川の流れの果てで大きな夕陽が沈もうとしていて、とても綺麗だった。
「ほんとだ…てかコタ先生、こっちだと学校へは遠回りじゃんー?」
「そうだったか? まあいいじゃん(笑)」
先生と生徒なのにまるで同級生みたいなくだけた会話、コタ先生を先生だって事を忘れそうだ。
「あのさあ。
オマエの好きな○○くんもさ」
しばらくして、先生は前を向いたまま歩きながら、俺の好きな野球漫画の主人公の名前を出した。
何だろう? と思いながらも、こっちを見ない先生の背中に向けて相槌を打つ。
「うん」
「試合で指折ったじゃん?」
「うん」
「でもさ、最後まで諦めないでさ…がんばってさ…勝ってさ…」
「…うん」
「でも指はそのまま治らなくて…野球から離れちゃってさ…」
「…うん」
相槌が、詰まる。
○○くんは指が治らないまま中学を卒業して、物語は後輩達がメインとなって進められる…
「高校生になって、別のスポーツやったりするんだけどな、それでも○○くんは野球が大好きで…頭から離れないんだよな…」
………???
え、今なんつった?
「…ちょっと待ってコタ先生。
俺…そのエピソードしらない」
「えっまじで? 読んだことない?
…やっべー、ネタバレだ!
つーか、愛読書ならチェックしとけよ~、いくら本編から外れた番外編だとしてもさ(笑)」
結末に続きがある事に呆然とする俺に、コタ先生はケラケラと笑った。
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