悠の詩〈第2章〉
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強烈な打撲による筋挫傷、と診断された。
要は肉離れ、だけど酷い断裂の仕方で、想像以上の炎症を起こしていた。
レントゲンを撮って貰ったが、骨は折れていなかった。
それだけでもよしとしなけりゃならないのか…しばらくの安静、それからのリハビリ、いつドクターストップが解かれるのか分からないというのに?
俺から野球を取らないで、いつだったかのおふざけ半分の自分を、ふ、ははは、冷たく笑った。
病院での待ち時間は死ぬほど長くて、ようやく終わって家に着いたのは日が暮れて大分経ってからだった。
食欲も起きず、真っ直ぐ自分の部屋へ閉じ籠った。
電気も点けないで、ベッドにうつ伏せになって、ボソッと闇へ吐いた。
「…終わっちゃったんだ、なあ」
玄関を跨いだ時に視界に入ってきた、廊下の電話の留守録のランプのチカチカ…
(ご用件をお話し下さい、ピーッ。
──もしもし。○○○中野球部の□□です。
春海くんの具合どうですか。
試合は、あの後逆転されて、9回裏の攻撃も及ばず…敗退しました。
ゆっくり休んでくれと伝えて下さい。また後日連絡します)
顧問の先生の沈んだメッセージ…
それらが胸をえぐった気がする、それを隠す為に、自分の下にある掛け布団を掻き集めて、手と脚でギュッと閉じ込めた。
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